或る商標を付けた商品を製造する目的ではないのだがその商標を使いたいという人が、商標権者にライセンスを求める行為は、通常はうまくいかない。例えば、個人営業の小売店が「あるメーカーの商品を扱ってるので看板やチラシにそのメーカーの商標を使わせてくれ」と権利者であるメーカーに正式に契約をお願いすると、権利者はああでもないこうでもないとあれこれ難癖をつけて、商標使用を許諾しようとしないのが常である。商標権者は自己の利益を最大限に考えて、ほぼ必ず「ダメ」と言う。商標というのは完全に自分の私有財産なので、「誰が他人につかわせてやるものか!」というようなスタンスでの対応が多い。一般に、商標権利者は我利への関心は非常に高いのだが、商標は消費者の混同を避け社会秩序を維持する為の公的システムであるというような高度な意識は希薄なのである。目の前の利益追求一本の資本主義という世の中では、仕方のない傾向なのかもしれない。
しかし、このような我利我利を追求する姿勢には、社会秩序と社会正義の高所からの観点からの指導が必要であろう。商標というものは、商標権利者の考える正義ではなく、国民の考える正義の下で、社会全体で利用していかなくてはならない。
だから、上記のような商標使用許諾のライセンスの可否については、権利者の意思に係わりなく、日本なら公正取引委員会、米国のFederal
Trade CommissionやフランスのConseil
de la
Concurrenceなどが判定することにするとよいと思われる。そして、このような判定機関は、上記のような公的バランスを考える機関なら良いのだが、商標局(日本で言うと特許庁)ではダメであろう。一般に商標管理局は、権利者側から収入を得るシステムになっており、また権利者側と密な繋がりがある場合が多いので、権利者側の立場に立ちやすく、客観的公平な判定には支障があると思われる。
それに、法律の整備も必要だ。欧州では欧州商標指令の6条に「商標の効力の制限」という項を設け、商標権者以外でも、こういう場合こういう場合はその商標を使っても良い、ということが表記されている。日本の商標法では26条などであるが、はっきりしない。いずれにしても、商標局ベースの法律なので、もっと全体視野に立った機関からの具体的ガイドラインが必要であろう。
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